いまさら聞けない『キーワード』…助成金・補助金
「助成金・補助金」とは、返済する必要のない“もらいきりの資金”のことです。助成金・補助金を理解する上で欠かせないのが「助成対象経費」と「助成率」、そして「採択率」です。 助成金・補助金には、それぞれ募集要領が存在し、その中で外注費や設備費用、直接人件費など助成の対象となる経費が定められています。これが「助成対象経費」です。 また、「助成率」とは研究開発に必要な総事業費のうちどれ位が助成金・補助金として出るのか、その割合を意味します。助成率1/2、助成上限1,000万円の助成金・補助金であれば、総事業費2,000万円の研究開発まで対応できるわけです。助成金・補助金を受給できるかどうか、つまり「採択率」は助成金によって様々ですが、厚生労働省の助成金など一部の例外を除いて10〜20%というのが一般的です。 また、誤解が多いところですが、ほとんどの助成金の受給は研究開発活動が終了した後になります。つまり、“後払い”となるわけです。したがって、差し迫った短期の資金繰り対策としての効果はあまり期待できません。しかし、助成先企業に採択された場合、取引銀行などの態度も多少変わってくるケースがあります。助成金の受給資格を担保にとってくれることはありませんが、確実に支払われる助成金をあてにしての短期間融資も実際に行われています。
助成金・補助金は年間でみると約3,000種類ほどあると言われています。この中には中小企業やベンチャー企業が使えるものと、国が特定の業種を支援するために出す公的資金があります。後者は近年銀行業界の公的資金導入問題で話題となっていますから、皆様もよくご存知でしょう。 助成金・補助金はそれを募集する機関によってその呼び方が変わります。一般的に、経済産業省は“補助金”、厚生労働省では“助成金”と呼んでいます。また、100 万円未満のごく小額であったり、特定の取組みに対して一時的に支払われるものは“奨励金”、“給付金”などと呼ばれています。 また、返済不要の資金であるという観点にから見れば、公募事業や委託事業も公的助成の一種であるといえます。「公募事業」とは、簡単に言えば“この領域で社会に役立つことを何か考えている人(組織)はいませんか、いるのなら手を挙げてください。助成金を出しますよ。”というものです。 一方、「委託事業」とは、“ITやバイオ、環境や医療・福祉やなどの特定の分野において国が考えている研究開発を代わりに行ってくれる人(組織)はいませんか。助成金を出しますよ。”というものです。委託事業の場合、通常助成率は1。つまり研究開発にかかる費用についての全てについて助成金が出ます。
助成金・補助金の申請書は、一般的に事業計画書と呼ばれるものに非常に近く、どんな研究開発(事業)を行うのかについてのコンセプトワークと、見積収支計画、資金調達計画等の財務計画から構成されます。全編を通じて、プロジェクトの「新規性・創造性」「他者差別性(競争優位性)」「市場性(事業性)」「実現可能性」「具体性」「リスク要因」などについて保障する必要があり、何よりもそれらに一貫性(トータルバランス)があるかどうかが重要となります。 それぞれについてもう少し詳しく説明しておきましょう。
プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが今現在、業界内、異業種にも存在しないものであることを、業界紙や研究論文などの業界データ等で証明します。
プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが先行者や類似のものと比較してどう優れているのか、研究数値や価格など具体的数値を用いて証明します。
プロジェクトの結果生み出される技術や商品・サービスが対象市場(顧客ターゲット)にどのようなインパクトを与えるか、また、どのような新市場を創り出すか、統計資料等を利用した市場分析により予測します。
プロジェクトの単独実施能力や管理能力について、過去の決算結果や研究開発実績、組織の整備状況などから証明します。共同申請の場合は共同申請者の能力について客観的に証明します。
プロジェクトの進行について、細かなステップごとに計画し、資金調達計画を連動させてプロジェクト管理能力の高さを証明します。
市場、組織、資金などプロジェクト推進上の様々なリスクを事前に予測し、リスク回避対策を提案することで、危機管理能力の高さを証明します。
上記の1〜5にしっかりとした関連性を保障することにより、プロジェクト推進者としての総合力の高さを証明します。
助成金・補助金は雑収入。受給するとその期は収益性が著しく向上し、赤字企業が突然黒字になることも珍しくありません。なぜなら、例えば、1,000万円の助成金を受給した企業の経常利益率が3%だったとすると、1,000万円の助成金は、約3億3千万円の売上の増加に匹敵するからです。 しかし、日常的に助成金を活用している企業であっても、実際は当たれば儲けものとばかりに、まるで“宝くじ”でも買うかのように助成金を捕らえているところがほとんどです。そのため、採択されても計画通りに研究開発せずに結局助成金を受給できない企業も多く存在します。 助成金の導入についての企業のこのような意識は国としてもあまり歓迎できるものではなく、この点については私も同意見です。
常日頃から、助成金・補助金の受給を予め経営計画に織り込んでおくことをお薦めします。助成金・補助金の受給を前提に、経営計画を作るわけです。 なぜなら、新製品・サービスの開発を常に行う企業の場合、毎年同じ時期に同じ助成金・補助金を受給することも十分に可能であるからです。
現在は業種・業態に係らず、総じて売上は減少し、コストは増加する傾向にあり、頑張ってもなかなか儲からない時代です。企業が存続していくための収益の確保は今後ますます困難になっていくでしょう。このような時こそ企業活動に不可欠な事業には必ず助成金を導入し、消費者ニーズに沿った製品・サービスの開発を積極的に行うべきです。 そして、開発した製品・サービスをどこよりも早く消費者のもとに届けることで、“お客様に選ばれる企業”としての魅力を養い、厳しい競争を勝ち抜いていくバイタリティを身に付けるこそ中小企業には必要であると思います。 助成金・補助金は戦略的に活用してこそ、本当の意味で “身になる”ものなのです。
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